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ツアーを企画するに際し、最も重要なものは「観光地」に関する旅行情報であります。交通機関、宿泊施設、レストランと食事内容、観光地の史跡・見所、道路事情、バス、日本語ガイドの有無、宗教上のタブー、治安、気候、服装、携行品(お金)、CIQの制約、医療事情、緊急時の対応など、こうした情報について、他の成熟した旅行先(国々)に比べ「旅行情報」が少ない。シルクロード沿線の都市案内・ホテル案内・地図等お客様にお渡しする資料も少ないのが実態です。
2.「交通」が不便
例えば、中央アジア・ウズベキスタンを中心に「シルクロード・ツアー」を企画する場合、現在日本からタシケントへの定期直行便がなく、ソウル・北京またはイスラマバード経由となります。またその場合でも、進行スケジュールはせいぜい週2便程度となっています。夏から秋にかけてのベスト・シーズンには、関西国際空港からウズベキスタン航空のチャーター便が週1回運行されています。このチャーター便を利用した「中央アジア・シルクロードの旅」が各旅行社から発売されています。チャーター便を利用しない、同方面への観光旅行は計画しにくく、従って取り扱い人数が少ないのが現状です。「商用」で中央アジア方面へ行くビジネスマンは、今なおフランクフルトまたはモスクワ経由の定期便を利用して出張しています。つまり日本から中央アジアを見た場合、交通面では非常に「細い紐」で結ばれているに過ぎないのが現状であります。
ウズベキスタンには、シルクロードのファンならずとも、良く知られた、サマルカンド、プハラ、ヒヴァの歴史遺産が有名です。こうした方面へのツアーを企画・販売していくには、日本のホール・セラーの努力に負うところ大であります。チャーター便を飛ばす為には、それなりのリスクを伴います。中央アジア専門のあるホール・セラーは、そのリスクをカバーした上で、シルクロードに関する情報誌を発行し、観光地案内やカラー写真のパンフレットを作成、旅行代理店を通じツアーを募集しています。
中央アジアと日本の距離を縮めるには、情報面における改善もさることながら、日本と中央アジアの国の間に定期航空路の早期開設を望むものであります。
3.中央アジア諸国のビザの問題
ソ連の解体以降、中央アジア諸国のビザ取得が繁雑かつ難しくなりました。幸いカザフスタンに続きウズベキスタンも在日大使館を開設しますので、ビザ取得が容易になるものと期待しています。しかし、観光客誘致のためには、ビザ免除が有効な手段であることは論をまちません。一般的にビザ免除は二国間の相互主義に基づく問題ですが、「韓国」や「台湾」のように日本人観光客に対し、一方的にビザ免除をしている例もあります。('94年ビザ撤廃によるプロモーション効果として、それまで低迷していた前年迄の日本人渡航者数は、韓国10%、台湾17%と大きく増加しました。)
できれば日本人の観光目的の中央アジア訪問に対し、統一的なビザの免除措置が考えられないでしょうか。また同様のビザ免除措置が、中国、インド、パキスタン、イラン、シリア等において実施される日の近からんことを願っています。
4.ガイドの問題
旅行商品、なかでも歴史や文化をテーマにしたツアーにとってガイドはその内容を左右する最大の要素です。一般的に外国語が不得手の日本人にとって、日本語による案内は不可欠です。財団法人日本交通分社の「海外旅行実態調査」によれば、海外旅行の阻害要因の第一位は「言葉が通じない」からとなっています。現在は一部の国(中国、パキスタン、トルコ)を除いて、英語のガイドの案内を日本からの添乗員が通訳する形をとっています。できるだけ早い時期に歴史や文化などについて、お客様に満足していただける案内ができる、知識と技量を有する日本語のガイドの養成をお願いしたいと思います。

 

 

 

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